君と、僕の恋


( 牡丹 1/1 )



泣かないって決めてたのに、俺は泣いてしまった。


桜舞う卒業式。

早紀の震えた声での答辞。


退場する際に見えてしまった、いつも元気な早紀の涙。



あの早紀が泣くから、俺も涙ぐんでしまった。

泣かないって、決めたのに。


「あは、泣いちゃった」

「小中高、全部泣いたな」

「うん…光樹もね」


……泣いてたこと、
早紀にバレてたし。

まだ、目が赤いのだろうか。

早紀の目もウサギみたいに真っ赤だ。


「……これからはバラバラになっちゃうね」


今にも、涙をこぼしそうな目で、早紀は無理矢理笑って、言って。

言ったから――‥めちゃくちゃ、俺も切なくなって、泣きそうになった。

でも、必死で涙を堪える。

ここで泣くのは、
なんだか恥ずかしい。
から、頑張って堪えた。


「早紀、手、出せ」

「え…?」

「ついでに、目も瞑れ」

「うん」


ふわふわとまつげが揺れ、震えた手を俺に差し出す。

涙をいっぱい含んでいるのか、少し手がふやけている。


俺はブチ、と第2ボタンを引きちぎり、その手に置いた。


「もう、いい?」

「ああ。」

「……ボタン」

「やる。お守りにでもしとけ」


うん。うん。と、何度も早紀は頷いて微笑んだ。

その小さなボタンに、どれだけたくさんの感情が含まれているかも、知らずに。
ぎゅっと握りしめて。


「光樹さ、牡丹の花言葉知ってる?」

「知らない」

「そっか、あは、今の光樹にぴったりなんだよ」


今の俺にぴったりって。
どんな花言葉だよ。


「知らぬが花、ってやつだね。花だけに」


……うまいことを言うな。

俺のボタンを陽にかざし、きらきらっと光を反射させている。
早紀は目を細め、微笑んだ。


「私も光樹が好き」

「は……」

「でもね、付き合えない。」


ずしっと、重く。
その言葉が。
のしかかって。
また泣きそうに、なる。

でも。
泣かない。


「光樹が寂しくなっちゃうでしょ? 私も寂しいの…いやだよ」

「……させねぇよ、ばか」


だから、そのために、ボタンをあげたんだから。

俺の第2ボタン。
一番心臓に近いそのボタンを。
心臓を預けるかのように。
渡したんだから。


「どんなに早紀が遠くに行っても、俺、逢いに行くから。ずっと好きだから、だから……」

「光樹……うん」


胸の中に、温かいものを感じる。

とくん。
とくん。と脈打つ其れは。



「ボタン、大切にするね」



早紀の体温。
震える手のひらから伝わる、早紀の体温だった。

そっと。
別れを惜しむように、早紀を抱きしめた。




次はいつ、またこうやって、早紀を抱きしめられるのだろうか。

そんなことを思いながら。


( 誠実と、恥じらい )

牡丹
(100302)



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
卒業式シーズンなので
卒業式ネタでした。


⇒しおり挿入
前n[*]|[#]次n




⇒作品艫激rュー
⇒モバスペ脾ook


[←戻る]